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ガンと闘う医師 3ページ目

「楽しそうですね。みんな笑ってますよ。いい家族だったんだ....」

「ずっと、その写真を見ないようにしてきたんです」

「どうしてですか?」

「それを見ると余計に寂しくなるような気がして....」

「でも、写真を見なくても寂しかったんじゃないですか?」

「あまり、その頃のことを覚えていないんです」

「その頃のあなたは一体、何をしていたんでしょう?」

「たぶん、勉強だと思います」

「勉強?ずっと勉強ですか?」


彼は、独りぼっちになってからずっと両親の想い出を遠ざけてきたようです。

いくら望んでももう戻ってこないお父さんとお母さんなら、最初からいなかったものと思えば寂しくないと.... 

彼は寂しさを感じないようにガムシャラに勉強をしたそうです。

勉強をして、勉強をして、そして彼が選んだ道は「医者」でした。

それも腕のいい「ガン専門」の医師になったのです。

彼は両親を奪った「ガ ン」と戦い、やっつけるために医師を目指したのです。

彼が「去年、患者を10 人殺してしまった....」と言った意味は、そこにありました。

彼はガンだったお父さんやお母さんを助けたかった.... 

しかし腕のいい「ガン専門」の医師の元には、難しい患者が送られてきます。

彼は、治る見込みの少ない末期ガンの患者を多く担当することになりました。

助けたいのに助けられない・・・ 彼は、最悪の「無力感」を感じていました。

この無力感は、多くの医師や看護婦が経験するものですが、彼の場合はお父さんやお母さんの命を患者にダブらせているために、「絶対に助けねばならない」と自分を追い詰めてしまったのでしょう。

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